美しい日本のことば
2019年7月3日
白に南風と書いて「しらはえ」。梅雨明けに南東から吹きあげてくる季節風のことです。白南風に対し、梅雨どきに吹く風は黒南風(くろはえ)。どんよりと暗い梅雨空に、雲を払いながら吹き上げてくる風が、南から夏を運んできます。黒い風と白い風。他にも緑の風やピンクの風とも言いますね。本来、風に
2019年6月17日
「夜のしじま」で知られる「しじま」。黙や静寂を意味します。音のない静かな様子を表す「しじま」ですが、なぜか芭蕉のあの歌を思い出します。――古池や蛙飛びこむ水の音水の音がするのに、なぜか静寂を感じさせる。しかも、芭蕉が見ている風景がそのまま映し出されて、まるでその場に居合わせている
2019年6月3日
日本人であれば、知っておきたい言葉のひとつに「まほろば」があります。優れた良い場所、秀でた国土、という意味です。『古事記』の中で、倭建命が詠んだ歌はあまりに有名ですね。その歌に「まほろば」が出てきます。―大和は国のまほろばたたなづく青垣山ごもれる大和し美(うるわ)し 天皇の命によ
2019年5月20日
「文」と「色」で「あいろ」。模様のことです。もともと模様の意味を持つ「文」に色を合わせて「文色」。ものの形そのものも、こう言うのだそう。文字や文章などのように、目に見えるものの奥にあるのは作者の心のあいろでしょうか。形はあれどおぼろげで、受け手や状況によってさまざまな色に変化しま
2019年5月13日
かつて、公然と言えないことを匿名の文書にし、わざと落としておいた手紙のことを「落とし文」と言いました。権力者への批判や社会風刺はもちろん、好きな人への恋心などは面と向かっては言えませんよね。ネット社会の今では考えられませんが、昔は「落とし文」が伝達手段のひとつだったのです。この落
2019年5月2日
玉に箒と書いて「たまははき(たまばはき)」。酒の異名です。本来の意味は、その名のとおり、玉飾りのついた箒のこと。昔々、正月の子の日に蚕室を掃くのに使った小さな箒をこう呼びました。年の初め、天子は自ら田を耕し豊穣を祈り、皇后は蚕室を掃いて養蚕の神を祀る儀式を行いました。奈良時代に中
2019年4月25日
とりどりの色でにぎわう百花繚乱の季節。花のかんばせもにこやかです。「かんばせ」とは顔のこと。泣いたり笑ったり怒ったり、天気ひとつで色を変えるかんばせには、見ているほうもついついつられてしまいますね。顔、顔容、花顔、貌、面など、「かんばせ」と読ませる漢字はいくつもあり、紫式部や芭蕉
2019年4月20日
―ほのぼのとまどかに愛らしい。均整、優美の愛らしさでは、埴輪のなかでも出色である。この埴輪の首を見てゐて、私は日本の女の魂を呼吸する。日本の女の根源、本来を感じる。ありがたい。(「川端康成全集」第15巻)お気に入りの埴輪を手元において愛でる川端。文豪、川端康成は早くに両親を亡くし
2019年4月9日
頭上にも、足元にもむれ咲く桜。散ってなお美しい花は、桜をおいて他にはないような気がします。ましてや、水面に浮かぶ花筏(はないかだ)。舞い落ちた先が水の上というのもみごとですね。最後にひと花咲かせる桜の花の姿に、今も昔も変わらず人は心奪われます。―花さそふ比良の山風吹きにけり漕ぎゆ
2019年4月4日
木の末と書いて「こぬれ」。木の枝さきのことです。今は「梢(こずえ)」と書くほうが一般的かもしれませんが、木の根元に対し、「木の末」とするほうが木そのものの樹形が浮かぶようではありませんか?言葉には、先人たちの智慧や心象風景がつまっているのでしょう。 「こぬれ」は「木の末(このうれ
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