紅型で表す琉球の輝き
伝統を超えた色と型と光の饗宴
紅型作家
新垣 優香
ARAKAKI Yuka
沖縄の伝統工芸である紅型に、独自の技法で新たな風を吹き込む新進気鋭の紅型作家、新垣優香さん。大胆なスタイルとデザインで描く紅型は、一目見ただけで彼女の作品だとわかる。師匠につかず、独立独歩で歩んできたからこそ生まれた紅型の新しい世界をご覧あれ。
紅型に見る「ニライカナイ」
――海の向こうに楽園がある。
沖縄に古くからそう言い伝えられている場所「ニライカナイ」。神話にある不老長寿の理想郷、常世の国と同義とされるそこは、きっとこんな世界なんだろう、と彼女の作品を見て思った。
紅型(びんがた)作家、新垣優香。艶やかな大輪の花々を咲かせ、オオゴマダラが悠々と飛び交う、色と光に満ち溢れた琉球紅型。新垣オリジナルの紅型は、伝統という枠を超えてなお見る者に彼の地を思わせ、夢心地にさせる。南国の風にのって、甘い香りが漂ってくるようだ。
色彩を表す「紅」と、模様を表す「型」をそのまま名前にした紅型は、沖縄がまだ琉球と呼ばれていた13世紀頃を起源とする染物で、かつては王族や貴族など身分の高い人々の衣装として用いられていたが、時代が下るにつれ広く知られるようになり、一般に流布するようになった。京都友禅を思わせる雅やかさと、民族的な文様は沖縄の自然風土そのものだが、新垣の紅型はこれまでの工芸的なものとはちがう、絵画的な現代アートの要素も窺える。ちりばめた光の粒は「グリッター」と呼ばれるラメ状の粉末で、およそ紅型には用いない素材だが、新垣はそれを大胆に使う。キラキラ光る粒はまるで透きとおる海底にゆれる太陽の光のようでもあり、伝統を踏襲しながらもそれに縛られない自由さが、かえって沖縄らしい大らかさや温もりを感じさせる。
だからだろうか、匂い立ちそうな花園の紅型に集まるのは蝶だけではない。忙しない日常に疲れた人々が、不思議なエネルギーに惹き寄せられて集まってくる。そして、口々にこう言うのである。
「明るい気持ちになる」「元気が出る」「パワーがもらえる」と。
新垣の紅型にニライカナイを見ているのだろうか。