作家紹介
アーチスト写真

革と革にまつわるモノ

革を通して、世の中を考えてみる

「と革」ディレクター

髙見澤 篤

Takamisawa Atsushi

革を知るため、現場で学ぶ

 独自の革製品を作るようになって、皮への興味が膨らみ、動物への思いも深まった。客に説明する以上、自分自身がもっと革のことを知る必要がある。革のことをもっと深く知るために、髙見澤さんは国内外問わず現地へ足を運ぶ。

「少し前、ポルトガルへ行きました。飼育の仕方を見るためです。国によっても場所によっても飼育の仕方はちがいますからね。飼育するにもさまざまな方法があります。僕のブランドのコンセプトは『革を通じて世の中を考える』ということ。提案する以上、その革のことをよく知っていないといけない。ジビエだからいいとか、家畜だからいいとかというのではなく、ちがいを見てもらって、どうですかと提案するのが僕の役目ですから」

 コンビニやチェーン店は利用せず、魚は魚屋で、野菜は知り合いの農家から買う。なぜなら、自分自身がこだわりをもってモノづくりをしているから。作り手の思いが形となって現れることの良さを知っているから、命をいただく食べ物には特にこだわりをもつ。しかし、それは自分のこだわりであって、人それぞれのこだわりがあっていいとも言う。

「スーパーにあるような、きれいに整ったものもあれば、自家菜園の野菜のように曲がったり大きくなったりするものもある。そういうものほど自然で美味しいんですけど、どちらを好むかは人それぞれです。革も、もしかすると傷や穴があった方がいいという人もいるかもしれない。形を揃える必要はないと思います」

 革を掘り下げていくうち、これまで見えなかった害獣駆除の現状が見えてきた。革を扱うひとりとして、見て見ぬ振りはできない。それが「ジビエ革」に行き着いた髙見澤さんの物語である。

 髙見澤さんは言う。同じように、店に訪れる人にも知ってほしいと。尊い命を奪われた動物たちの生きた証を見てほしい。革と革にまつわるモノで自然の恵みへ想いを馳せ、世の中の目の行き届かないところにも目を向けてくれたら……と。

「と革」に並ぶ革製品は、髙見澤さんの手によって息を吹き返した。訪問者は感じるだろう。動物たちのたしかな息づかいと、静かな鼓動を。

(取材・原稿/神谷 真理子)

 

 

 

 

料理人が集まるかっぱ橋道具街からほど近い路地裏にある、小さなギャラリーショップ「と革」。店主でありディレクターの髙見澤篤さんが作る革製品は、害獣駆除などで捕獲された鹿や猪、熊などの革を使ったもので、ひとつひとつにコンセプトとドラマがある。本来であれば捨てられてしまう皮や角なども、命を余すところなく使いきってあげたいと「ジビエ革」と名付け、愛おしむように革製品を作り続ける。

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