革と革にまつわるモノ
革を通して、世の中を考えてみる
「と革」ディレクター
髙見澤 篤
Takamisawa Atsushi
料理人が集まるかっぱ橋道具街からほど近い路地裏にある、小さなギャラリーショップ「と革」。店主でありディレクターの髙見澤篤さんが作る革製品は、害獣駆除などで捕獲された鹿や猪、熊などの革を使ったもので、ひとつひとつにコンセプトとドラマがある。本来であれば捨てられてしまう皮や角なども、命を余すところなく使いきってあげたいと「ジビエ革」と名付け、愛おしむように革製品を作り続ける。
あえて手間をかける意味
世の中が便利になればなるほど、失われていくものがある。手間を省けば省くほど、失われていくものがある。そのことに気づき始めた人が、少しずつ増えてきたようだ。科学技術の急激な進歩によって忘れ去られたモノの復権や、あえて手間のかかることをして楽しむという風潮は、そのことを物語っているといえるのではないだろうか。
髙見澤篤さんが立ち上げた革製品のブランド「Six coup de foudre」(シス・クー・ド・フードル)は、そういう意味で、〝最先端〟をいっている。
彼が世に問う製品は、あえて手間のかかるものばかり。「使いやすさ」を求める現代人のニーズに合わせるという意思は感じられない。くわえて、製品の背景には奥行きのある豊かな物語がある。物語とは、髙見澤さんの思いと考えが結晶となったものだ。
たとえばSix coup de foudreを象徴する商品「ココロシリーズ」に、金属のフレームと革でできた長財布がある。閉じている状態のフレームはカタカナの「コ」の字型、裏返すと「コ」の字が左右反転した形。二つの留め金をはずして財布を開くとフレームが「ロ」の字型となって眼前に現れる。
さらに使い終えて財布を閉じる時、おのずと手を合わせている。つまり、「いただきます」の所作になっているのだ。
この一連の所作に、髙見澤さんの意図が隠されている。
では、なにをもってココロなのか?