心葉
2022年6月30日
心葉とは、「心」あるいは「心ばえ」のこと。あふれる想いや感情のことです。
そのむかし、人は鳥のように音をつなげた歌で意思の疎通をしていたといいます。それが、やがて意味のある言葉に変わり、会話になっていったのだとか。生きていくため、人とつながるために、心に浮かぶ想いを言葉にしたのです。その想いを、『古今和歌集』の仮名序の冒頭では「心の種」と言っています。
―― やまと歌は、人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける。世の中にある人、ことわざ繁きものなれば、心の思ふことを、見るもの聞くものにつけて、言い出せるなり。
葉がいっぱいの樹木が健やかで豊かなように、人の心葉もたくさんあると豊かに過ごせそうですね。たとえ今はなくても、見るもの聞くものをかきあつめれば何かが芽生えるはずです。
―― 人知れぬ わが心葉に あらねども かきあつめても ものをこそ思え(和泉式部続集)
ガーデナーの前田満見さんの著書『小さな庭で季節の花あそび』に、この歌がこんな風に解釈されていました。お嬢さんの小学校の入学式で聞いたそうです。
「衣食住どんな場面でも良いのです。どんな些細なことであっても、自分自身の心に響く何かを見つけ、それを大切に育みながら心豊かにくらしましょう」と。
色とりどりの葉がゆれる景色を心に描いてみてください。どんな庭が見えますか。
(220630 第113回)