冬ざれ
2019年12月6日
鉛色の空と、色あせたもの哀しい荒涼とした冬の景色を見ると「冬ざれ」という言葉が浮かびます。枯れがれの木々、眠りについた動物たち、大地をすべってゆく乾いた風……。冷たく深閑とした冬にしっくりくる言葉ではありませか?
でも、もとは冬が来たことを表す「冬され」の「され」がにごっただけ。昔は「なる」という意味で「さる」が使われており、冬になると「冬され」、春は「春され」「夏され」「秋され」と、季節の移り変わりにはかかせない言葉でした。
ところが、「冬ざれ」となったとき、風雨にさらされ色あせるという意味をもった「曝(さ)る」のイメージと重なってしまい、寒々とした冬の景色を表す言葉として使われるように。
―― 冬ざれや小鳥のあさる韮畠 蕪村(「蕪村句集」より)
寒い冬のさなか、わずかな餌をもとめて小鳥が畠をついばむ様子が目に浮かびます。
色も音も減ってゆく冬ざれの季節。かすかな音や一輪の花の色も際立ちます。冬は五感を研ぎ澄ませる、絶好の季節かもしれませんね。
(191206 第58回)