木守
2018年12月20日
寒空に、ぽつんとひとつだけ取り残された柿。「木守(きまもり)」です。来年もまたよく実りますように、とのいわれがあります。
「きもり」とも「こもり」とも言いますが、いずれも木を守るということに変わりありません。
木守柿のように、樹木を守り世話する人も木守と言い、桜の木を守る人は桜守(さくらもり)とも。木々に寄り添い、声なき声を聴きながら命を守り続けます。
そういえば、『枕草子』の中にも「こもり」が登場しています。
ー こもりといふ者の築地(ついじ)のほどに廂(ひさし)てゐたるを、縁のもと近く呼び寄せて…
庭木番という者が土塀のあたりに屋根をさしかけて住んでいるのを、縁の真近に呼び寄せて、宮つかえの女房は庭に積もった雪の番をするようにと伝えます。
孤独に耐えながら日々研鑽に励む人たちは、ときに木守と重なります。たとえ世の中から取り残されようとも、与えられた使命をまっとうしようとするのでしょう。その姿は、孤高の人と呼ばれるだけあって美しい。
見えないなにかの声にしたがい、命を守りつなぐ木守と孤高の人に、尊敬の念は絶えません。
(20181220 第25回)