綿帽子
2018年10月8日
白無垢姿の花嫁が、新郎以外には顔を見せないようにと被る綿帽子。姿が似ていることからたんぽぽの綿毛もそう呼びますが、もとは女性が外出するときに被る埃除けや防寒具だったとか。江戸中期以降、高貴な人の儀礼用として、今では神前挙式には欠かせないものとなりました。
真っ白な綿帽子から連想するのは、清らかで汚れのない純粋無垢な女性。男性ならずとも、その初々しさと奥ゆかしさには心惹かれることでしょう。
ー ついに着なれぬ綿帽子 わしが顔よりこなさんの 肌にこれをと風ふせぐ
伝統芸能のひとつである、一中節の「道行三度笠」にある一節。
新町の梅川にいれあげた飛脚宿亀屋忠兵衛が、為替金の封印を切って梅川を身請けし、二人連れだって駕籠(かご)に乗り、忠兵衛の故郷へ逃げる道中の様子を唄っています。
花魁梅川が、はじめて被った庶民の綿帽子を愛する忠兵衛に被せて吹き込む風から守ったということ。
自分よりも相手の寒さをおもんぱかってそうしたのです。
綿帽子の綿のあたたかさは梅川のやさしさ。花魁でありながら純粋無垢な梅川の、真っ白な心の表れなのでしょう。
すべてがオープンになった今だからこそ、その奥ゆかしさが胸を打ちます。
いくつになっても梅川のような綿のようにやわらかくあたたかな、相手を思いやる心を持っていたいものですね。
(20181008 第4回)